June 30, 2003

eye catch 第五回


烏号は素通りして清谷行きの船へ。
免許代のため路銀を少しでも節約したい身としては、渡航費の安い船に乗りたい。
そう言うと、ビットに腰掛けていた船員らしき男は怪訝そうに顔を上げた。
「あ〜ん?」
男のしかめ面にも昂俊はニコニコしている。人見知りの割にはこう言うところの度胸は座っている奴である。(ただの鈍k…略
男は上から下まで昂俊を検分すると、
「ああ、いいよ、タダで。積荷と一緒に寝泊まりするんで良けりゃな」
「いいんですか!」
昂俊が顔をほころばせたとたん、背後から思いきり背中を叩かれた。
「おい、お前こんなところにいたのかよ!」
振り返ると見知らぬ青年が立っている。
「探したぜ、ったく」
船員の男は怪訝そうに昂俊を見た。
「連れがいるのか?」
「え、あ、いや…」
昂俊は混乱して男と青年を交互に見た。
「はは〜ん、お前、オレとはぐれたんで置いてかれたと思って慌てて船に乗ろうとしたな? おっちゃん、悪いけどこいつの乗る船は別にあるんだ。じゃあな!手間とらせたな!」
青年はまくしたてると昂俊の腕をとって強引に引っ張った。
「え〜と、あれ?ど、どうも、さようなら…」
船員に手を振ると、男は苦笑を返すのみだった。
倉庫街を抜け、市街まで来たところで青年はようやく昂俊の腕をはなした。
「え〜と、どこかでお会いしましたっけ?」
昂俊がおそるおそる訪ねると、青年は盛大なため息を漏らした。
「お前なぁ、まだわかんねぇのか?」
「ええ…失礼ながら記憶にないようです…」
「アホか!そう言う話じゃねえ!さっきの船!」
青年は周囲の人が一斉に振り返るほどの声で怒鳴った。
「さっきの船が、なにか…?」
「ありゃ、密輸船だ! 積荷と一緒って事はだ、積荷の内容を知れば殺されるし、そうでなくても売り飛ばされるのがオチだ!お前なんてひょろひょろしてるからあいつらに輪姦(まわ)された挙げ句、巧かどっかの妓楼に突っ込まれるだろうな、間違いなく」
ぽかーん、と口を開けて昂俊はその話を聞いていた。
「そうなんですか?」
「そうなんだよ!」
「…そうですかねぇ?」
「しつけーな!助けたのに礼もなしかよ!」
ぽむ、と昂俊は手を打った。
「そうですね。お礼を言うのをすっかり忘れてました。どうもありがとうございます〜」
ぐにゃぐにゃ、と青年は脱力し、ようやっと立ち上がると昂俊の肩を叩いた。
「とにかく、好き好んで密輸船なぞ乗らんでもただで慶へ行く方法はある。オレのPTも丁度慶に行くところだ。ついてこい」
「は、はあ…」
昂俊は言われるままに青年の後を追った。

Posted by psi at 10:55 AM | eye catch TrackBack (0)
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