堯天に着いたはいいが、何のために堯天に来たのか忘れてしまった。
シナリオが始まるとのことだったが、役所にでも行けばいいのだろうか。
役所に行くと、「シナリオ?なんのことだ。 来月までに古周へ行けという布告を見ていないのか?」と、怒られた。
「怒られちゃったじゃん!」
「オレのせいじゃねーよ」
「そもそも堯天に行こうって言ったの誰だっけ?」
「知らね」
「夜紫野じゃない?」
「違うよ!」
「きっと古周に行けって言うのと間違えたんだよ」
「だから私じゃないって! いくらアニキでもそれ以上言ったら許さないよ!」
「おっ、やる?」
アニキが武器を抜く。私もスタンバイだ。
「まてまてまて、おまえらが仲間割れしたら本気で血をみるぞ!洒落になんねーって」
Bさんがあわてて止めに入る。
「仕方ないわよ。戴から帰ってきて敵は弱いし金はもうからないし、欲求不満なのよ」
Aさんはクールだ。
「とにかく来月まで間があるから、どっか少しでも手ごたえのある場所で欲求不満を解消しましょ?」
私とアニキも構えをとき、うなづいた。
「どこへ行く?」
「私、新しい冬器を仕入れたいの。堯天に行きたいな v」
えっ、とAさんを除く全員が固まる。
一瞬遅れてAさんもえっ?とキョトンとした顔をする。
たっぷり10秒程固まったあと、私がゆっくりと口を開いた。
「Aさん、ここ堯天なんだけど…」
一度(以上)死んだ人間というのは、方向感覚や土地勘に狂いが生じるらしい…
翌朝深城に向かうことにして、私はAさんの買い物に付き合って街へ繰り出した。
両手いっぱいにブランドの紙袋を抱えてようやくAさんは満足したらしく、帰りに二人で喫茶店に入って一休み。オープンテラスの席をとると、Aさんが「あっ」とおもむろに通りの反対側を指さした。
「あれ、Bさんじゃない?」
確かに、Bさんとおぼしき橙色の髪の毛の後ろ姿が見える。
向かいのアミューズメントセンターには戦闘シミュレーターが入っていて、そこで訓練をすることが出来る。そのシミュレーターにBさんが腰掛けていた。
「うらららららららららあああああああっ!」
「死ねええぇぇぇーーーーー!」
「オレは死なねえ! お前をコロす!」
ものすごい勢いでジョイスティックを操るBさん。
私とAさんは昼間温厚な笑顔で私とアニキのケンカを仲裁していたBさんの姿を思い出し、そっと涙をぬぐった。
#このBさんの頑張りにより、バーサーカーズは武の序列2位(最高時)にランクイン。